ひとり、森をあるく。
昨日は仕事がお休みだったので、夫を誘って白谷雲水峡に行って来ました。
前の日にお客様と行った白谷雲水峡があまりにも綺麗で、 夫にも見せたいという気持ちと、私自身も続けて行きたいという気持ちと。 4〜5日前に、ものすごいどしゃ降りがあり、次の日には急に冷え込み、また飛び石連休も終わり観光シーズンも一段落したのか、屋久島は突然違うチャンネルに切り替わったようになりました。 空気は今までに見た事のないほど透明で、曇っているのに遥か彼方の島々がくっきりとよく見えます。樹々は葉の色を変え、水の碧も深さと透明度が一段と増しています。 白谷雲水峡の入り口を抜けしばらくすると、私たちは自然にそれぞれ一人ずつで森の中を歩き出しました。 ガイドをする時は人と一緒ですが、今日はまた全く違うモードで、自分一人で森にとけて行くよう。 一歩ずつ、ていねいに、ていねいに。 ゆっくりと息を吐き、ゆっくりと息を吸い。 移りゆく瞬間瞬間を味わって。 目の前に広がる光景、頬に当たる空気、足の裏の感覚・・・。 カサコソという音、沢の流れる低い音、高い音、鳥の声、奥の方で、後ろの方で、シカの鳴き声、自分の足音、息をする音。 サザンカの香りから、バニラのようなクリーム色の香りへ、そして甘く香ばしい香り、そして清涼なスギの香り。 森の中にあるがままにあるそれらすべてを、かき消してしまわないように、 じっとその場に佇んだり、集中したり、見つめたり、目を瞑ったり、そうっと通りすぎたり、 その瞬間にふさわしいやり方は、森とのとけあいの中ではたぶん自然に為されていて、そうやってわたしは森となって、あるきました。 胸いっぱいになりながら、森の道の分岐点に着くと、夫も胸いっぱいになってそこにいました。 本当はコースの目玉でツアーでは必ず寄る場所がこの先にあるのですが、そこには行かずただただ満ち足りた気持ちで道を引き返し、二人で森を後にしました。 私がかつて森に目覚めたのは、ある時、人に山に連れて行ってもらったのをきっかけに、その後毎日毎日ひとりで森を歩いた体験からでした。 ひとり森歩きで得た感覚を言葉で表すのはとても困難なのですが、その時に森からいただいたものはあまりにも大きく、聖なるもので、その体験を人にも伝えたいという思いからガイドを志し、今に至ります。 実のところ、その聖なる体験はひとりであるからこそ起こるものだと思うので、ガイドでそれを伝える事はとても難しく、自分自身葛藤も抱えています。 だけど、森との関わり方はいろいろな角度があって、私が案内したお客様が屋久島から帰った後、さらに森との関係をそれぞれに深めていったら、それほど嬉しいことはありません。 森との新しい扉を開くようなガイドができたら嬉しいな、と思っています。
by office-manatsu
| 2009-11-06 15:34
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